【働く天使ママインタビュー】#2 ぽんちゃん
様々な業界・職種で働く天使ママ達が、どんなことを感じ・悩み、気づきを得て歩んできたか、今まさに歩んでいるのか。働く天使ママの体験談をiKizukuがインタビューしてご紹介します。
《#2 ぽんちゃん》
【プロフィール】
ぽんちゃん(30代)
・お仕事:看護師
・雇用形態:フルタイム正社員
・ご経験:2017年に流産、2021年に人工死産
・Instagramアカウント:pochan.ponpon
1.現在のお仕事について教えてください。
看護師として働き始めてから二つ目の病院です。新人から働き続ける人は少なく若い人や30代が多い職場です。現在は、正社員として入退院の支援業務に従事しています。
2.ご経験について教えてください。
1人目は稽留流産(2017年)、二人目は出産(2019年)、三人目は無頭蓋症で人工死産(2021年)を経験しました。
3.ご経験後、仕事はどの程度お休みしましたか。その期間は十分でしたか?
①稽留流産の時:1週間
稽留流産の際は直属の上司である看護師長にしか妊娠を報告していませんでした。3日程度休めば復帰できそうな状況でしたが、丁度休みたいと思っていたので1週間程休みました。
当時は病棟勤務のため、夜勤などもあり休みは取得しづらい仕事でした。そのため、1週間も休んだことは職場の同僚からすると珍しく思われたかもしれないです。職場の同僚には、休む理由は体調不良と濁して伝え休みました。
休み明けも、休んだ理由については特に話すことはありませんでした。職場には、妊婦や経験後に妊娠した人もいたので羨ましい気持ちもありました。復帰後も気持ちはもやもやしていてすっきりしないまま仕事をしていました。
②人工死産の時:産後休暇8週を取得
8週間の休みについては、自分で調べて職場に申請しました。妊娠12週以降の流産も産後休暇を8週間取得できることは、医療従事者でも知っている方は少ないのが現状かもしれません。私の場合は、職場の上司や同僚、私の担当だった助産師や産婦人科医も知りませんでした。産婦人科医からも「仕事どれくらい休めるの?」と聞かれたくらいでした。「身体が大丈夫だったら仕事してもいいよ」という感じでした。なので自分で制度を調べて申請しました。私が8週間の産後休暇を申し出ると「出産は出産だもんね。身体を休めてね」とは上司から言われました。
8週間休めば、身体は元気になったので戻れると思いましたが、職場には妊娠中の方もいて、私と同じ時期に妊娠していた人もいたので精神的に辛くなるだろうなという予想はしていました。一方で、8週間も休んだからもう戻らなきゃという職場に対して申し訳ない気持ちもありました。私の役割を他の人に任せていたので、一人欠けると他の人負担も増え、これ以上は迷惑をかけられないという思いもありました。
また復帰時期が3月末だったので、新年度の前に戻った方がいいと思い8週での復帰を決めました。身体は回復しても、精神的な面ではもう少し休みたかったです。自分が今、業務ができる状態なのか、心療内科や精神科など一回受診をして診てもらっておけば良かったと今は思います。4.お休みの間、どのように過ごされていたか教えてください。
上の子も保育園に通っていて一人でいる時間が長かったので、最初の1ヶ月は毎日どこかで泣いていました。ひたすら引きこもっていました。YouTubeを見て泣いて、インスタを見て泣いて、と。残りの1ヶ月は復帰に向けて心を戻さないと、と思い、グリーフケアを学びました。考え込む時間をなくそうとしていました。
休みの間に2回程度は職場に行き、身体の状況を報告したり、人事についての確認はしていました。人の動きについては聞いていましたが、業務については聞いていなかったので、復帰してからフル回転で働かなければならず大変でした。
5.ご経験後、職場復帰する際に考えたこと、感じたことを教えてください。
復帰後に私がどんな心の状態か、上司に気にかけて欲しかったです。また、今の自分の心身の状態が本当に仕事に戻れる状態なのか自分では判断がつかないので、臨床心理士や精神科医等の第三者からアドバイスがほしかったです。病院内の臨床心理士に話を聞いてもらえたらなぁと思うこともありました。ただ私の病院にいた臨床心理士は男性なので、ペリネイタルロスに関しては限界があるかもとは思いました。また、上司に相談しても良い答えが返ってこないのではないか、「もう大丈夫じゃない?」とうまく丸め込まれそうと思いました。
6.職場復帰後はどのように働いていますか。
復帰後からフル回転で働きました。4月から新しい役割もがっつりと与えられました。復帰後何事もなかったかのように仕事を与えられたのが辛かったです。
体調とかどのように働きたいというような復帰前の面談などはありませんでした。言えば聞いてもらえたのかもしれませんが、極限にならないと相談しない性格なので、上司にも自分の希望する働き方や辛い気持ちは言いませんでした。まだ頑張れそうと思うとなかなか言えなくて…。
心の状態が安定しておらず業務でミスをすることもありました。今思うと「辛い」と思ったら、相談して休める環境であれば休んだ方が良いと思います。上司もちょうど変わって半年くらいの人で、お互いのことをあまり知らなくてもいいやと思うところもありました。その上の部長や相談窓口に話すことはできるのですが、自分から相談することはありませんでした。今思うと部長に相談してもよかったなと思います。
天使ママさんに作ってもらったキーホルダー
7.ご経験後、働き方やキャリアについて考え方が変わったこと、感じることを教えてください。
看護師としての仕事はやりがいを感じているので続けたいですが、正社員は働く時間が調整しづらいため、比較的融通の利くパートタイムに変更する予定です。そう思ったのは上の子との限られた時間をもっと大事にしていきたいと思ったからです。私が働くことで子供に我慢をさせたくない。自分の時間、やりたいことをする時間も取りたい。そう思うようになりました。
また、産後休暇中にグリーフ専門士の資格を取りました。復帰後は、自分の経験を活かし、産婦人科外来で周産期のグリーフケアの取り組みをしたいと提案をしました。
直属の上司は協力頂けて嬉しかったのですが、実現までの道のりはなかなか厳しいと感じています。上司から部長に相談してして下さり、一度は産婦人科外来で取り組んでよいという所まで進展したのですが、マニュアルが無いのに実施するのは…という理由で止まっています。
医療従事者としてグリーフケアが必要なことを伝えても、「緩和ケア病棟でやってみたら」と言われたり、「これまでの仕事疎かにしないで」と言われてしまったり…。新しい取り組みなので病院のトップはなかなか動けず、私が助産師資格も持っていたら違ったのかもしれませんが、病院内で孤軍奮闘している感じです。結局私って一人ぼっちじゃんと思ってしまいました。
ペリネイタルロスを経験し当時者となって感じることは、グリーフケアやターミナルケアについて、経験や年数によっても差はありますが、医療従事者は雑学程度の知識しか持ち合わせていない現状です。患者が亡くなられた時、看護師は病棟では家族に寄り添いますが、家族と一緒には泣かず我慢します。仕事中だから泣いてはいけない、患者の前で涙を見せてはいけない。私もそう認識していました。
グリーフケア・ターミナルケアは経験しないと関わり方は分かりません。コロナ禍で面会ができなくて最期に会える時間もすごく少なくなっています。家族が亡くなった患者を送り出せるような関わり方は、看護師がしないと本当に誰もしてくれないです。患者と家族と病院の繋がりは受診と入院であって、亡くなると切れてしまいます。グリーフケア外来は必要だしやっていくべきだと思っています。
8.職場へのご経験の伝え方やその後のやり取りについて、大変だったこと・自身で工夫したこと、改善して欲しいことがあれば教えてください。
私の場合、自分からは経緯を話すことは辛かったので、上司から職場の同僚等には伝えてもらいました。復帰後、「大丈夫?」と何人かは声はかけてくれました。
リアルで直接経験を話した人はいません。子宮外妊娠を経験した友人がいたので話したことはありますが、「育ってからのお別れではないから全部は分かってあげられない」と言われました。
もし同じ経験者と繋がれたら、悩んだときにどう解決したのかという情報が欲しかったです。特に妊婦を目の前にした時、どう対応したらよいかについて知りたかったです。申し送りを受ける相手が妊婦さんというような時は、話の内容が全然入ってこなくて仕事に集中できない時がありました。9.職場の人との関係について、辛かった・嬉しかった・助かった声掛けや対応、経験前後の変化などがあれば教えて下さい。
「元気そうで良かった」という言葉は本当に傷つきました。
嬉しかったことは、ちょうど退職する先輩から手紙を頂いたことです。その手紙には、「実は2人目は臨月死産だったの。だから、どうやって声をかけて良いか分からなくて声かけれなかった。私は引きこもりになったよ」と書いてありました。その手紙を読んだ時、本当に辛かったんだな思いましたし、私の気持ちを少しでもわかる人が近くにいたんだと少しホッとするような感覚になりました。先輩がまだ職場にいれば直接話したかったです。
他の方々は経験前後に対応の変化はありません。私が感じてないだけかもしれませんが。10.ご家族との関係について、経験時・お休み期間・復帰時・その後の働き方について考える際など、どのようなサポート・やり取りなどがありましたか?
夫に雇用形態をパートに変更することを伝えた時は、「やりたいようにやればいい」と言ってくれました。職場復帰の際の旦那のサポートは特になかったかな。たまに話すくらいで、あまり多く話すことはありません。
11.同じ働く天使ママ、これから職場復帰する働く天使ママさんへ伝えたいメッセージがありましたらお願いします。
自分の気持ちをわかってくれる人は本当に一握り、そんな人が会社にいたらラッキーです。職場復帰ができても、ずっとモヤモヤしながら働いてる人も多いと思います。色んな理由で仕事を辞めることができない人もいると思いますが、心が元気じゃないと身体も元気になれないので仕事をやめる、ガラッと変えるというような思い切りも大事だと思います。
本当に今の仕事をずーっと続けていくべきなのか自分に問うことも大事です。私は復帰した時期が年末だったので、タイミング悪く辞めれませんでしたが、今年度で雇用形態の変更をお願いしようと思ってます。
また、私は8週間で戻らなければならないという思いがありましたが、同じ働く天使ママには、無理しないでと伝えたいです。ちゃんと自分の状態が働ける状態かどうかを専門家等の第三者に見極めてもらうのが良いと思います。自分の状態を知ることは大切で、自分を知るためには他の人に客観的に見てもらう必要があります。得に私は、他人から後押しをもらえると頑張れるタイプなので。働く天使ママさんへの職場復帰のアドバイスは必要だと思います。
ぽんちゃんさん、大切な想いを聞かせて頂きありがとうございました。
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