【働く天使ママインタビュー】#7 のんちゃんママ

様々な業界・職種で働く天使ママ達が、どんなことを感じ・悩み、気づきを得て歩んできたか、今まさに歩んでいるのか。働く天使ママの体験談をiKizukuがインタビューしてご紹介します。

今回は、のんちゃんママことyukaの経験をご紹介します。

《#7 のんちゃんママ》


【プロフィール】

のんちゃんママ(神奈川県在住/30代)

・仕事:流通業 会社員

・雇用形態:正社員

・経験:第一子となる長女を妊娠18週で死産



1.あなたのお仕事について教えてください。


経験時は入社12年目、経営企画のような部署に異動して4年ほど経った頃で、中堅社員として忙しく働いていました。上司や同僚とも仲が良く、楽しく仕事に取り組んでいました。



2.あなたのご経験について教えてください。


2017年に絨毛膜羊膜炎により第一子を死産しました。妊娠17週で破水して緊急入院、子宮口が開いてしまっており、母体にも感染が広がっていて母子ともに危険ということで妊娠18週で人工死産を選択しました。


娘のために初めて編んだ帽子



3.ご経験後、仕事はどの程度お休みしましたか。


産後休業8週間を取得した後に一度復帰したのですが、精神的な回復ができていない状態で、仕事に全く集中できず、10日ほど勤務したのちにうつ病と診断されて傷病休業を取ることになりました。結局は合計5ヶ月間休んでようやく復帰しました。



4.お休みの間、どのように過ごされていたか教えてください。


夫が仕事の間に家に一人でいられなかった為、休み期間の前半は実家で、後半は自宅に実母に通ってもらう形で過ごしていました。

死産直後はベッドに潜って引きこもり状態でした。少ししてから職場復帰・次の妊娠に向けて身体を整えなければ、と、リハビリに買い物やランチなどに外出をしたり、漢方を始めたり、整体に行ったり、身体の気になるところを診てもらおうと色々な病院に行ったりしていました。また、精神的に不安定だと感じていたので、民間のカウンセリングを受けるなどしていました。毎日様々なことに不安を感じ、それを解消しなきゃと迷走している状態でした。

今振り返るともうこの時点で抑うつ状態にあったと思います。当時は「グリーフ」というものを知らず、通常の範囲を超えて悪化した状態であると気づけず、当時は何とか心身を整えようと頑張っているつもりでしたが、逆効果になっており、結果的に産後休業の8週間では回復することができず、うつ病と診断され、休職となってしまいました。

その後精神科に通い、服薬とリハビリでなんとか寛解して復職することができました。休職中、最初の頃はまたベッドで引きこもり状態でしたが、後半は図書館に通ったりして過ごしていました。



5.お仕事を休職した際、職場復帰する際に考えたこと、感じたことを教えてください。


私の場合は、赤ちゃんを亡くしたことに加えて仕事まで失いたくない、自分の存在意義を失いたくないという気持ちで、職場復帰が大切な目標でした。

ネットなどでは「仕事をしていたから死産したのではないか」というようなことを言う人もいますが(私の周囲にはそのようなことを言う人はいませんでしたが)、私の場合はつわりがひどかったこともあり、妊娠中は仕事の負荷を落としてもらっていましたので、全く職場への負の思いはありませんでした。むしろ、応援してくれていたのに無事に産めなかった、迷惑を取り戻さなければという思いだったかもしれません。

精神的な不安定さは感じていましたが、死産という悲しい経験をしたのだから仕方ない、何とか8週間で心身を整えてしっかり復帰したいという思いで、自分としては頑張ったつもりでしたが、やはり知識がない状態で自力での回復はできませんでした。しっかり専門家に頼れば良かったと思います。精神的な病気だと診断されてしまったらキャリアに傷がつくから嫌だという思い、精神的な病気になる人は弱いというような偏見もあったと思います。

復職したのはちょうど死産した娘の本来の出産予定月でした。その区切りまでに復職したいという目標を持って頑張りました。復職できたときは嬉しかったです。


最後のエコー写真



6.職場復帰後はどのように働いていますか。


復職直後は席についているのがやっと、難しいことが考えられない、という状態でした。産業医や上司と相談した上で、復職後はしばらく時短勤務とし、仕事内容も負荷を減らし、単発の業務やサポート業務につかせてもらいました。その後徐々に勤務時間を延ばし、業務内容の負荷も戻していきました。



7.ご経験後、働き方やキャリアについて考え方が変わったこと、感じることを教えてください。


仕事が好きで、残業もいとわずバリバリ働いているタイプで、精神的にもタフな人間だと思っていました。死産とうつを経験し、仕事をセーブする期間があったり、サポート業務をしているときは、以前とのギャップに落ち込むこともありました。しかし、自身を過信しないこと、心身の健康の大切さ、家族の支えがあって生きていること、職場の理解のありがたさを自覚しました。ライフ・ワークバランスを大切にしようと改めて時間の使い方を見直し、無理をせず周りの助けを求めることもしていこう思えるようになりました。また、職場の同僚にも、職場では見えない悩みや苦労を抱えているのかもしれない、そういった仲間がよりよく働けることを支援できるような仕事をしてみたいと思うようになりました。



8.職場への連絡や相談の仕方(ご経験、お休みの仕方、体調、働き方などに関して)や連絡・相談後のやり取りについて、大変だったこと・ご自身で工夫したこと・改善してほしいことがあれば教えて下さい。


職場の制度も整っており、上司や同僚にも恵まれて必要な配慮・対応をしてもらえたため、大きな問題はありませんでした。ただ、会社の各種制度が掲載されたイントラネットや冊子には関連の制度や手続きが「流産や死産の場合」という形ではまとまっておらず、また職場でも同様な事例がこれまでなく上司も知らなかった為、調べるのに苦労しました。急なことで本人も混乱している中、あちこちに散らばった情報を見つけることはとても大変なため、必要な情報がまとまって提供されるべきだと思います。

尚、その後人事にこのことを伝えたところ、イントラネットの情報を整理してくれ、現在は「流産や死産の場合」とまとまったページができています。

死産直後の各種手続きについては、私は入院中でもあり、精神的にも落ち着いて連絡をできる状態になかったので、夫が私の職場に連絡を取ってくれました。死産した事実や休むことなどについては、上司から同僚や関係者に伝えてもらうことにしました。

カウンセラーさんから、体調や働き方についての希望、復職後の声掛け(NGワード)や接し方で配慮してほしいことについては、遠慮せずに正直に伝えるのが良いというアドバイスをもらえたのが良かったです。復職前の上司との面談で、「普通に接してほしいが、まだ元気ではなく、生活するのがやっとであり、復帰には不安があることを知っておいて欲しい」「次の子どもを望むので妊活をしたい」「時短で単発・サポートの仕事をしたい」ということを伝えました。伝えて良かったと思います。



9.職場の人との関係について、辛かった・嬉しかった・助かった声掛けや対応、経験前後の変化などがあれば教えて下さい。


死産になったことを伝えた際、上司から「こちらで手続きはするからゆっくり休むように」と言ってもらえたこと、上司も流産の経験者で、奥さんに私にどのように声掛けをしたらいいか相談してくれていたとも教えてくれ、とてもありがたく、嬉しかったです。

職場の同僚は、復職後も死産については特に触れることもなく、復職前と同じように接してくれたことが私にとってはよかったです。一方で、仕事の量や働き方については配慮してくれ、あたたかく見守ってくれました。とても優しい職場であること、理解がある職場のありがたさを感じ、今後もこの会社で頑張ろうと思えました。



10.ご家族との関係について、ご経験時・お休み期間・職場復帰時・その後の働き方について考える際など、どのようなサポート・やり取りなどがありましたか?


休み中は家事が満足にできなかったので、しばらくは実家で過ごし、その後は母が私の自宅に通って家事・食事の準備をしてくれました。また、私は悲しい気持ちや不安な気持ちを夫にかなり吐き出していたのですが、それを辛抱強く聞いてくれました。

家族の支えがなければ復職できませんでした。休職中に毎日通ってくれて家事をしてくれた母、健康と働くことへのアドバイスをくれた父、様々な手続き・職場とのやりとりを一手に引き受けてくれ、精神的に不安定になった妻を支えてくれた夫、遠くから見守ってくれたきょうだい、義実家の家族に本当に感謝しています。



11.同じ働く天使ママ、これから職場復帰する働く天使ママさんへ伝えたいメッセージがありましたらお願いします。


私は職場にとても恵まれていると思います。SNSなどで働く天使ママさんの体験談をお聞きしていると、職場からの支援がない方、退職せざるをえなかった方など、とても辛い思いをされている方が沢山いることを知り、悲しさ、憤りを感じています。

正確な情報や知識を身に着けて、家族や職場としっかりと会話をすることが大切だと思います。使える制度は適切に使って、必要な配慮をしてもらうことをためらわないで欲しいです。「わがまま」ではなく、組織で働く社会人として、心身を整えて適切なパフォーマンスを発揮する為、職場が適切に従業員を管理するために必要なコミュニケーションだと思います。その為には、働く天使ママさんにも、適切に、必要な思いを伝える力をつけて欲しいと思います。ペリネイタルロスに関する情報が不足している中、経験していない周囲の方は分からないこと、「察してほしい」では伝わらないことを私も学びました。

休んで申し訳ない、迷惑をかけられないと考えて自分を責める、責任感の強い頑張りやの働く天使ママさんが多いと思います。でも、無理して働いて心身を壊したり、退職してしまうことの方が逆に大きな迷惑をかける無責任なことなのだと私は気づくことができました。辛い時はしっかり休む、それが長期的には会社の、自分の、家族の為になると思います。妊娠出産でのトラブルを経験されなくても、自身やそのご家族の健康問題などで、同僚の方も支援が必要になる可能性は誰にでもあります。「お互い様」という優しい、あたたかい職場が増えて欲しいです。

手形足形をもとに作ってもらった作品

iKizuku

働く天使ママコミュニティ【イキヅク】 ペリネイタルロス(赤ちゃんとのお別れ) を経験した働く女性 =「働く天使ママ」のサポートを通じて 思いやりの心が息づく社会をめざします

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